難波が脱退した。

其れを聞いた時は普通にショックだった。
難波さんってのは、Hi-STANDARDのベースボーカル。

ハイスタはずっと活動休止だった。
『解散した。』とか『復活する。』とか『捕まった。』とか…
色んな噂が飛び交っていた。

そんな中、かなり前なんだけど、PIZZA OF DEATHのHPで、
ギターのKENのコラムを見て知った。

友達に『読め!』って言われて呼んだら、難波が脱退したと書いてあった。

ハイスタ自体は解散した訳じゃないらしい。
難波が脱退しただけで、『ハイスタが解散する事はない』、とKENは言っていた。

其れはそれで良いかも知れない。
だけど、つまりはもうあの三人のサウンドは聴けないって事?
でも、『未だにオレは Hi‐Standard で再びプレイする日を心待ちにしている。その日が果たして来るのか来ないのか、誰にも分からない。オレにも分からない。勿論ツネにも難波にも分からない。もう二度とやらないかもしれないし、来月になったら突然再開するかもしれない。』
とKENは言っていた。

だけど、結局はしないと思う。
期待はするけど、確信を持って信じる事は出来ない。

俺は思った。
『音楽が変わる。』
大袈裟なんかじゃない。

俺が中1の頃、初めてHi-STANDARDを聴いて、俺の中の音楽が変わったのと同じ様に、
ハイスタが居なくなった事によって、音楽が、日本の音楽が変わると思った。
一つの時代が終わったのを感じた。
新しい時代の幕開けはまだ感じられない。

色んなバンドが出て来てる。
当たり前の様にCDショップでインディーズのCDが買える。
いくつもオリコンに並ぶ。
確かに新しい時代が来ているのかも知れない。

だけど、てっぺんには何も無い。

それじゃぁ駄目でしょう。

誰もが、不意に何かのきっかけで一枚のCDを手に入れ、そして目覚める。
俺がハイスタで目覚めた様に、今、まだ目覚めていないキッズが、いつか何かのCDを聴いて目覚める。

一体誰の曲で目覚めるんだろう?
今世に出ているバンドの殆どは、Hi-STANDARD程のカリスマ性を持っているとは思えない。
正直、これから先に、そんなバンドが現れるのだろうかと不安でさえある。

絶対の人気。
『Hi-STANDARD』と言う標準。

「どんな音楽聴いてるの?」
って聞かれて、
「ハイスタ」
って答えたら、きっと誰も文句は言えない。
「誰?それ?」
なんてファッキンな事言う奴なら居るだろうけど、
「ハイスタ?何処が良いの!?」
なんて言う奴が居る訳ない。
いや、大袈裟ではない。
「今頃ハイスタかよ!?」
って言われる事はあるかもしれない。

実際、いつだったか、ウォークマンでハイスタMDを聴いていたら、友達が
「何聴いてんの?」
って言われて俺は普通に
「ハイスタ」
って答えたら、
「今時ハイスタかよ!」

おいおいちょっと待ってくれよ!
ワッディジューセイ!?
『今時』ってなんだよ!?
ハイスタが古いって事!?
確かに年代の話だけだと古いけどさ、ちょっと違うんじゃない?
よく考えてみて。
俺がハイスタ聴くようになって早8年だよ!?
8年間も同じCD聴けるか!?
久し振りに出てきて「懐かし〜い」なんてノリとは訳が違うんだぞ!?

今でも俺の胸を昂らせる曲、曲。
ストレートな歌詞、サウンド。
ハイスタについて語るなら、俺よりももっと上手く語れる人が居るだろうけど。

俺達は何処へ行くんだろう。
本当に聴きたい曲が最近どんどん少なくなってきている気がする。


俺の中で「難波脱退」はカナリの衝撃だった。
歴史が動いた瞬間といっても過言じゃない。
俺の中では満州事変よりもランクが上だ。
って言うか満州事変はランクに入ってないけど。

俺が一番最初に覚えた曲は、『NEW LIFE』だ。
ベーシストなら、『NEW LIFE』が最初って人は多いと思う。
まさに新たな人生の幕開けだった。

まさか俺がステージの上に立って大勢の客の前で叫ぶなんて。
そんな事小・中学校時代は想像も出来なかった。
いや、妄想くらいはしたかもしれないけど。
ステージの上で何万人(実際には数百人)の観客(半分友達)を魅了し、感動させることが出来た(自己満)。
こういう経験は一度味わうとやめられない。
ライブがしたい。
もっと沢山の人を感動させたい。
歌で、文字で。

結局、「今の軽いバンドを聞くならハイスタを聞け!!」なんて、偉そうな事は言えないんだけど。
だってそうでしょう?
音楽は強要する物じゃ無く、共有する物なんだから。
価値観って、人それぞれ違うのは当たり前。
だから世の中って面白くて、クソつまんないんだ。
いつかまた自分の好きな事をやってそれだけで楽しいって時間を大好きな仲間と共有できる日が来ると良い。
俺も、アイツも、あなたも。
皆やりたい事があって、それでも出来なくて、だから悩んで、そして音楽に救われる時もあって…。


色んな事があって、そして、まだ生きてる。
馬鹿みたいに人生にぶら下がってる。
大きな、本当に大きな夢があって、でも、社会の歯車のひとつとして生きる道を選んでしまった。
何の考えも無しに、適当に道を歩んで、途中で気が付いた時には、後ろを振り返るばかり。

それじゃあ駄目なんだ。
あの時、沢山あった道。
何も考えずにただ舗装された道を選んだ。
変える。
帰る事が出来ない今、変えるしかない。
今から、強引に、本当に行きたかった道に舞い戻れ。
その為には沢山の苦労と、多くの犠牲が伴うんだろうけど、そういう事を言っている場合じゃない事を解ってくれ。
俺は馬鹿だったんだ。でも気付いたんだ。
今の俺は俺じゃ無いって事。
友達に言われた。
「らしくない。」
「今のお前ダッセェって。」
「何を燻ってるの?」

ハジケロ。


本当の俺はまだステージの上で歌っている。
やっと気付いたんだ。
だから解って欲しい。

俺は金髪になるんだろう。
俺が金髪になった時、その時が、始めて『俺』になった時だ。
それがいつになるか解らない。
今年中かもしれないし、3年後かもしれない。
本当に自分のやりたい事だけをやって生きていくのは、限られた人にしか出来ない事だと言うのなら、逆に問う。

俺は限られた人間ではないの?
俺は選ばれた人間には成れないの?

That's just 否!!
What a talking about?

誰にだって、自分が日本一輝ける場所があるんだよ。
それに気付かせてくれたんだ。

Hi-STANDARD




平成十六年三月三日午後六時二十四分
以心伝心
竹下泰敬